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第二部

教育基本法
(生涯学習の理念)
第三条  国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。


父は昔、僕に向かってこう言った。
「結婚するなら、美人で達者で賢いひとを選べ。」
母のそばで僕にそう話す父は幸せそうだった。

父は会社勤めをしていて母は専業主婦だった。
父は好き放題に生きてきたように見えるが、僕には彼が妻のことを愛し続けていることが分かった。でも、その気持ちは母には全く届いていなかったように思えた。
母は夫からの愛に気づくことなく、人並みの生活を送れることに感謝することもなく、いつも悲劇のヒロインを自演していた。母は、父の収入が彼の小遣いを残して全額家に納められていたにもかかわらず、一言の感謝を述べるでもなく不平不満しか示さなかった。父は大企業に勤めていたので世間相場以上の安定した収入があったのだが、母は収入が少ないと詰ることさえあった。
でも、それが彼女の自我を保つうえでの唯一の方法だったに違いない。
父は頑固な人で、それだけに理解されにくく、常に居場所が無いような様子を示していた。
子どもの目には、両親の気持ちが通じていないように見えていた。


父はある時期、単身赴任をしていた。初めての一人暮らしだった。
業務は多忙だったが、一日頑張ったご褒美の晩酌は格別な味がした。
しばらくすると生活にも順応し、一人の部屋で布団に入るのが心地よく感じるようになってきた。
赴任寮近くの○○銀座と呼ばれる盛り場へ仕事仲間と行くのが数少ない楽しみだった。
なかでも、「スナックK」という店には父のお気に入りの女の子がいた。
水商売の世界では、店の女の子は単身赴任の男にはいれ込んではいけないという暗黙のルールがある。任が解かれると去って行くからだ。
お気に入りの子とはいっても結婚もしていて子どももいるし、年齢は父よりもひとまわり以上若かったので相手にされるわけもなく、なによりも店自体が明るい健全な店だったので、皆で陽気に騒いで歌って、父は翌日からの仕事の活力を得ていた。

その子は父が店へ行くと、必ず父の隣りに座ってくれた。体に触れることも無いけれど、いろんな話をした。
父はそこで、おもてなしの心を学んだ。
人に優しくすることを学んだ。
そして、妻一人に優しくできない自分が、店の女の子に優しくできるわけがないと思った。
その子はとても聡明で頭の回転が極めて早い子だったが、父はかつて、生涯でただ一人、自分に「好き」と言ってくれた妻の賢さに惚れたことを思い出したのだった。

僕が成人となって父と酒を飲む機会が何度かあったが、父はアイデアマンだった。僕は父の突飛なアイデアを、笑い飛ばしたり感心したり、実現に向けた荒唐無稽な議論で盛り上がったり。今でこそ会社は従業員に成果しか求めていないが、一昔前の企業戦士はいかに業務を改善するかに重きを置かれていた。
父は家族に対して頑固なイメージしか示さなかったが、息子と酒を交わす時の父は雄弁で知識も豊富で考え方も柔軟だった。


「激動」と言われる時代が長く続いている現代において、価値観もめまぐるしく変化している。
変わるものに適応していくためには、自らの行動や思考も柔軟に変えて行く必要がある。
人間は常に学習し、常に発達し続けているものだ。
人格も、その気になりさえすればいくらでも高くすることができる。
発達が人間の一生を通した継続的な変化の過程であるならば、人間は一生を通じて変化し続けなければならないし、人格の完成を目指し続けなければらないのではないかと考える。
そうしなければ、真実は何も見えない。


僕は、両親が喧嘩するのを一度だけ見たことがあった。
原因が何かは分からなかったが、僕が居合わせた時には父が水道の蛇口をひねり、洗面器一杯に張った水を母に浴びせるところだった。
さすがに僕は間に入って仲裁した。
父は母に手をあげることができない人だと思った。
その時、母の心は水よりも冷えていた。

母が僕の家に来た時にプッチーニの歌劇「蝶々夫人」のレーザーディスクを見せたことがあった。
両親が結婚前に舞台の袖で合唱した曲、「あんなに仲が良かったのに」とつぶやき、彼女は涙を拭っていた。

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関西在住。平日は北陸方面で単身赴任中。
息子は、父の影響で大の鉄道好き。
用事が無くても電車に乗る。

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