題詠blog2009選

題詠blog2009の会期は明日をもって終了します。
ちょっとフライングですが、これまでに私が観賞した歌を中心に一首ずつ好きな歌を選んでみました。
主観だけで選びましたので、ここで紹介できなかった私の尊敬する歌人もたくさんいらっしゃいます。
何分にも規模の大きな歌会ですので、失礼をお許しください。



001:笑(みずき) (空)
嘆かじと笑み生るるまで冬近き鏡の中にわたしを探す

002:一日(さや) (ふかふかの日々をふかふかと共に)
教団の入りたいのね?八月の一日は仕事休めますわね?

003:助(日向奈央) (てのひらのきみ)
ばかだから助けられたい助けたい あなたの生きる意味になりたい

004:ひだまり(emi) (時計をはずして)
ひだまりで笑う少女のスカートが揺れて春の日さよならと言う

005:調(キヨ) (ぼくはこんなことが好き。)
浮気とか勝手にドラクエ進めたりとかしてないか今から調べる

006:水玉(O.F.) (O.F.)
水玉の透明ビニール風呂敷で白猫包めば沈丁花咲く

007:ランチ(音波) (短歌のなぎさ)
サマランチ会長ほどの永遠を誓って君を吾が物にする

008:飾(藤野唯) (Sugarmint)
わたしだけの熱でここまで永らえてくれた恋に白椿を飾る

009:ふわふわ (井手蜂子) (Hello,Mr.Darkness.)
2メートル先のworldendにはふわふわwaraw異世界のひと

010:街(岡本雅哉) (なまじっか…)
市街地で育ったんだねやわらかくひとのあいだをすり抜けるきみ

011:嫉妬(木下奏) (ブログ・キ・カーデ - 木下奏 blog)
「嫉妬する?」「ううん、しないよ」その言葉パズルゲームみたいなものだ

012:達(蓮野 唯) (万象の奇夜)
しっと(嫉妬)りと口溶け甘い罠を張る乙女達は恋の狩人

013:カタカナ (minto) (@100@)
ふりがなを付けたるときはカタカナに その恋叶ふと占はれたり

014:煮(ほきいぬ) (カラフル★ダイアリーズ)
どれくらい煮込んだだろう裏道の白が眩しい小さな部屋で

015:型(駒沢直) (題詠blog参加用。)
型落ちの冷蔵庫から聞かされた彼女が死んだほんとの理由

016:Uターン(原田 町) (カトレア日記)
カーナビの言うこときかぬ君ゆえにUターンを余儀なくされて

017:解(伊藤真也) (クラッシュボク)
埋められない方向性でおっぱい部・部長まさかの解任劇

018:格差(松原なぎ) (日向水)
天地格差を説く指に輪が光りせんせいわたしけっこんします

019:ノート(柴田匡志) (スタートライン)
初めての新車は日産ノートにて納車の日にはそわそわしてる

020:貧(鹿男) (もえないゴミ箱)
浴衣から見えるそいつを期待して富豪にハート渡す貧民

021:くちばし(月下燕) (月下の燕)
くちばしもしっぽもあなたにあげましたただわたしだけいまはそれだけ

022:職(間遠 浪) (少女らせん)
「職業が家出少女のともだちがあたしを少しこわしていった」 model:相原玲

023:シャツ(富田林薫) (カツオくんは永遠の小学生。)
青いシャツのひと泣きながら待っている変わらない赤の交差点

024:天ぷら(笹本奈緒) (ニダンカイサセツ)
るすばんの時のぶつだん キョンシーの天ぷらくらいおそろしかった

025氷 (惠無) (なんでもない一日)
なぜそれが氷屋さんかわからずにひっくり返した三輪車

026:コンビニ(都季) (31pieces)
「真夜中のコンビニみたいな人ですね」君の笑顔の真意が読めない

027:既 (斉藤そよ) (photover)
ついくせで羊をさがす ふたりとも 既に手にしているというのに

028:透明(うたまろ) (五と七と五と七と七)
価値を越え透明なまでに稀有な意味 愛する人に出会えたことは

029:くしゃくしゃ(ノサカ レイ) (のーずのーず)
幾たびも くしゃくしゃにした約束を君は果たして天国へゆく

030:牛(マトイテイ) (ようこそ 纏亭へ)
後ろから牛が来てます失った思い出だとか背負っております

031:てっぺん(nnote) (白い箱から)
鉄塔が埋め尽くす空てっぺんの青に漂うさまざまのゆめ

032:世界(にいざき なん) (改題「休まないで歩けとチーターが言ったから」)
プテラノドン「ハロー 静かな宵越しと ハロー 世界の逆回転」

033:冠(あみー) (正直なたましい)
くさなぎのくさは草冠に早い、つよしは岡のみぎにりっとう

034:序(水風抱月) (朧月夜に風の吹く。)
別たれるひとときのみにふと過ぎる 『来世で逢おう』絆の序文が

035:ロンドン(チッピッピ) (うたよみブログ)
お土産に買った玩具のロンドンバス甥っ子遊ぶ「にちりん」とともに

036:意図(花夢) (花夢)
意図的に嫌いになろうとしてみたら涙みたいに星が流れた

037:藤(帯一鐘信) (シンガー短歌ライター)
藤棚をさ迷う蝶に追いかけるぼくと君との視線重ねる

038:→(月下 桜) (*月下桜の世界*)
二秒後にぶつかってしまう緑の人→        ←緑の人

039:広(龍庵) (題詠blog2009 龍庵)
青空は曖昧模糊と広がって僕は生きてる理由を無くす

040:すみれ(春待) (三感四音)
すみれ色アメジストリング欲しがりし君は来月十六となる

041:越(みぎわ)(たづたづし)
若さゆゑの自惚れつらつら浮き上がり腰越状は哀しき手紙

042:クリック(野州) (ねっしやすくさめやすく)
十五分の楽曲に一度しかないシンバルのやうにNOをクリック

043:係(羽うさぎ) (羽うさぎの日記帳)
おたがいのおはなしを聞く係です役割あれば生きやすいから

044:わさび(虫武一俊) (無足場ワンダーランド)
もうええわさびしい老後やろうけど長所の捏造なんてできひん

045:幕(石畑由紀子) (裏デッサン。短歌・題詠マラソンを走っています。亀スピードで。)
紅い血でひとを裏切る劇をみて幕間にきみの小指を噛んだ

046:常識(KARI-RING) (ほとりほとりと藍色の海)
従ってやるほど価値も見出せぬ創造主(自称)作った常識

047:警(市川周) (ミルミルを飲みながら)
警備員照らす理科室ともだちがいるってどんな気分だろうか

048:逢(陸王)(Always Walking with Yu)
逢えたからとてもしあわせだったからわたしはひとり京都へ行くの

049:ソムリエ(ことり) (歌)
ソムリエの恋人がいますその人はすぐに小鼻をぴくぴくさせるの

050:災(森山あかり) (言葉の花かご)
災いは人生の帯なによりも強い絆を育むための

051:言い訳(秋月あまね) (予定された調和が見つかりませんでした。)
隕石が落ちてきたとか 言い訳を聞くのはつらい よく動く口

052:縄(ぽたぽん) (今日には今日を 明日には明日を)
兵十が火縄銃持ちごん撃ったときの気持ちになったさよなら

053:妊娠(中村成志) (はいほー通信 短歌編)
綴じ込めたはずの( )から滴った涙で月は妊娠をする

054:首 (穴井苑子) (猫のように純情)
この首がにょろり伸びたら海の中スキップしながら遊びに行くね

055:式(田中彼方) (簡単短歌「題詠だ」)
サクマ式ドロップスのうちハッカだけ 食べてしまって、口をきかない。

056:アドレス(村本希理子) (きりころじっく2)
秘密番号(ピミルボノ)設定、住所(チュソ)にアドレスを とあるところの会員となる

057:縁(星野ぐりこ) (題詠100首爆走中。)
縁側で祖母がゆっくり気化してく七月の空、きっと永遠

058:魔法(健太郎) (モノクローム文芸館)
夜明け前 解けない魔法 シンデレラ いつもの笑顔が ほんとは見たい

059:済(新田瑛) (新田瑛のブログ2)
色々とありましたけどすべてもう済んだことです 生きてください

060:引退(佐藤紀子) (encantada)
母は母 その役割に引退も休暇もなくて太郎を思ふ(浦島太郎物語)

061:ピンク(木下一) (ワイワイやってる暇はねえ!)
ピンク色している君のパンティが桜前線教えてくれた

062:坂(今泉洋子) (sironeko)
入寮の子を見届けて女坂卯月の風に抱かれくだる

063:ゆらり(こゆり) (おかっぱ短歌)
最後くらいきちんと記憶したいのにあなたの顔さえゆらりと滲む

064:宮(理阿弥) (車止めピロー)
返事待つモニタを映す窓に闇 蛾を喰う守宮の腹膨れゆく

065:選挙(ふみまろ) (光る風の記憶)
異教徒が滅びの術を連呼する選挙に向かえ ああ砂嵐

066:角(詩月めぐ) (かじられちゃったお月様)
丸四角記号みたいな彼の国の言葉覚える あなたのために

067:フルート(千坂麻緒) (薔薇十字蕩尽短歌)
放課後に取り残されたフルートの銀のひかりに刻んだ傷跡

068:秋刀魚(佐藤羽美) (hinautamemo)
秋刀魚焼く匂いの満ちる室内で夫が猫の霊気をさせる

069:隅(日向弥佳) (黒猫ときんぎょ)
いつまでも心の隅にたたずんだ君にさよなら花を贈って

070:CD(ウクレレ) (十線譜)
忘れないようCDに焼き付けたあの日ふたりで見つけた虹を

071:痩(ほたる) (ほたるノオト)
痩せていく猫の背中の鍵盤をなぞれば生命(いのち)のか細さ響く

072:瀬戸(ひじり純子) (純情短歌)
瀬戸物の食器をあれこれ選ぶとき無心になれる時を忘れる

073:マスク(ろくもじ) (タンカコタンカ 題詠篇)
唇を潤すだけに君がいたことに気づいた マスクをはずす

074:肩(tafots) (1年で1000首をつくる)
帰り路のいもうといつもこめかみの窪みを肩に乗せて眠りし

075:おまけ(ゆき) (ひたぶる君を)
こぶだしとかつをだしとのあはせだしおまけにあなたひとのものだし

076:住(ぱん) (向日葵 と 月)
きみの住む町を今でも通るけどもう信号で探してないよ

077:屑(さかいたつろう) (流星文庫)
パン屑をこぼして歩く女の子 笑って付いていく男の子

078:アンコール(はこべ) (梅の咲くころから)
アンコールしてみたいほどの過去はなく あしたこそはと毎日が過ぎ

079:恥(じゅじゅ。) (rahasia2 〜題詠blog2009〜)
再会のシャルル・ド・ゴール空港のキスなら平気 恥ずかしくない

080:午後(迦里迦) (香飄)
かぶきたる午後は過ぎにき変性(へんじゃう)の生の身ひとつ水へ降りゆく

081:早(久哲) (久哲の適当緑化計画。)
謀反とかするタイミングにはちと早い深夜にたぬき蕎麦でいいかな?

082:源(伊藤夏人) (やわらかいと納豆2009)
震源はあなたの胸の奥だから背中をそっとさすってあげる

083:憂鬱(こうめ) (はこにわ相聞歌 )
この手もて悪魔を引き裂く夢想する 憂鬱に伏す君の髪撫で

084:河(夏実麦太朗) (麦太朗の題詠短歌)
上野まで河馬を見に行きたいのですとても小さな河馬と聞きいて

085:クリスマス(酒井景二朗) (F.S.D.)
獨人きり靜かに過ごすクリスマスに冷えたラジオが輝く刹那

086:符(西中眞二郎) (しなやかに、したたかに、無責任に・・・西中眞二郎雑記帳)
風に飛びし切符拾いて渡したる女と並び改札を出る

087:気分(みつき) (みそひと :: misohito ::)
ああ今日は天気もいいし君のこと振り回したい気分なのです

088:編(jonny) (迂闊な夜の真ん中で)
編集をされた事実を渡されて僕の思想はどこかが歪む

089:テスト(Re:) (プリズム)
テスト中に窓から見えた空みたい欲しくなってるあの人の声

090:長(Ni-Cd) (反実仮想)
長袖をつかんで彼をもぎとろう(乙女の日記:10月7日)

091:冬(西野明日香) (水の中のASIAへ(短歌な毎日))
ささやかに君を祈らん忍冬(すいかずら)越冬ののち小さく咲いて

092:夕焼け(櫻井ひなた) (ひなごと☆23→24)
夕焼けが目に染みただけ春からは「また明日」ってもう言えないね

093:鼻(磯野カヅオ) (その時の主人公の気持ちを三十一文字で述べよ。)
着床に至る経緯を説いてみる 鼻の高さの泡立草に

094:彼方(天鈿女聖) (うずめの花ビラ)
室伏の力を借りてケータイを空の彼方へ捨ててやりたい

095:卓(船坂圭之介) (kei's anex room)
禁断の味の恋ほしき 完熟のトマトに振れぬ嗚呼食卓塩

096:マイナス(たざわよしなお) (世界を翻訳するための試み)
来年の色恋割り切れぬ歳 素数マイナス12の素数

097:断(すいこ) (すいこのうたおきば)
断ち切ったわけでもないのに糸はただ細くなってくまた会いたいな

098:電気(田中ましろ) (ましたん)
お願いよ電気を消して 遠くからゴルゴがきっとのぞいているわ

099:戻(五十嵐きよみ) (NOMA-IGAオペラ日記)
羅紗紙がやぶれた本を強引に箱に戻して終える少女期

100:好(梅田啓子) (今日のうた)
一刻なひと好きになるわが性(さが)よ音叉がきふに共鳴するらし

101:永遠(DILI)
ゆふぐれに見つかりしもう片方の沓永遠の硝子の城に

題詠2009鑑賞(053:妊娠)

「053:妊娠」(TB〜182)。

053:妊娠(中村成志) (はいほー通信 短歌編)
綴じ込めたはずの( )から滴った涙で月は妊娠をする


もう諦めたはずだったあのひとへの想いがふとしたことで溢れ、泣き濡れたわたしに満月のつきのひかりは届くことはなかった。

題詠2009鑑賞(052:縄)

「052:縄」(TB〜186)。

052:縄(ぽたぽん) (今日には今日を 明日には明日を)
兵十が火縄銃持ちごん撃ったときの気持ちになったさよなら


「ごん、お前だったのか?いつも栗をくれたのは」
ごんは ぐったりと目をつぶったまま うなずきました。
                 〜新美南吉「ごん狐」より〜


ものゐはぬものに
私は、「さよなら」と云うことはどうしてもできません。

題詠2009鑑賞(051:言い訳)

「051:言い訳」(TB〜179)。

051:言い訳(秋月あまね) (予定された調和が見つかりませんでした。)
隕石が落ちてきたとか 言い訳を聞くのはつらい よく動く口


スランプにより「051:言い訳」の鑑賞ができなくて、一ヶ月以上経ってしまいました。
思い起こせば9月14日、私はこの日、その後の人生感を変える出来事に遭遇したのです。
ある人に対して「あなたはこの日で人生感が変わる」と予言していたら、それが我が身に降りかかってきたのでした。

人は誰も、決して押してはならないスイッチを持っています。

その日私は、宇宙人の友達と火星の酒場で日本酒を飲んでいました。
寒い夜は熱燗に限りますw
二人とも銀河系の平和を守る仕事なのでやたら話は盛り上がり、気がつけば霞ヶ関ビル3杯分の清酒が空いていました。
そこでお開きにすれば良いものを、調子に乗って特撮ヒーローメドレーで、カラオケ5連発行ってしまいました。
でも店の外は真空状態なので、騒音が漏れて近隣に迷惑をかけることはありません。
相当出来上がった状態で6曲目を選んで、デンモクの送信ボタンを押しました。
今にして思えば、デンモクにしては重いし大きいし、ボタンもおおげさに赤かったし。
その直後、ひとつの美しい惑星が粉々に破壊されました。
そんな危険なもの、飲み屋に持って来るなよっ!

それからしばらくの間、たいへんな日々が続きました。
ボタンスイッチ押下により発射された波動砲は、何億もの知的生命体の住む平和だったであろう星を木っ端微塵にしちゃいました。
我々の手に負えなかったので、創造主のところへ頭を下げに行きました。
さすがに全知全能の彼はすごくて、時間を戻してちゃらにしてくれました。
神さま、ありがとうw
惑星の平和は、このようにして守られたのです。
喧嘩する度に恋人たちのつながりが深くなるようなもので、私は、もう二度と悲しませないと心に誓ったのでした。

あと、道を歩いている私の目の前に隕石が落ちてきたという話もあります・・・
(後略)


ほんと、記事を書けなかったことの言い訳って見苦しい(笑)

私は言い訳はあまり好きじゃないのですが、待ち合せにちょっと遅れたりした時は、「暴風雨の中、断崖絶壁をよじ登ってイワツバメの巣を取りに行ってた。」と、言っています。
なお、中華料理のツバメの巣は、アナツバメのものだそうです。


忘れてた><

これで3,000円

上の写真は、10月5日に仕事仲間と行った飲み会の料理。
美味しかったですw

そして、ふと気がつきました。
今月、私が酒類を飲んだのはこの一回きり。
かれこれ三週間もの間、一滴も飲んでいません。
飲めなくなったわけではなくて、単に飲むことを忘れてただけです。

思い付いたら居ても立ってもいられないのが私の良いところw
今宵は、パーっと行ってきました(笑)
今日は、安眠できそうです。


なお、10/19〜25の記事は順番を入れ替えました。

ある日、寒さで凍えたヤマアラシがモグラの家を訪れました。
「お願いだから、冬の間だけ家に住ませてほしい。」
モグラはヤマアラシの願いを聞き入れました。
同居生活が始まりましたが、モグラの家は狭い穴ぐらなので、ヤマアラシが動くたびにヤマアラシの針がモグラの体を引っ掻くのです。
我慢ができなくなったモグラは、ヤマアラシに出て行ってもらえないかと言いました。
ヤマアラシは答えました。
「ここに居るのが嫌なら、君が出て行けばいいじゃないか。」

第一部

ここから始まる物語はすべてフィクションであることをお断りしておきます。


昔、日本は戦争に負けた。
長い戦争が終わった時、世界平和のために日本の勢いを抜くことが必要と考えた米国は、日本がなぜ強国であったのかを研究した。その結果、日本の強さは日本人の家族制度にあるという結論が出た。
日本は特定の宗教思想を持たない国(神の国)なので、米国はまず神を人とすることにより、日本人の心の拠り所を分断した。次に、祖先や親兄弟隣近所を大切にするという日本の大家族制度を破壊するため、教育体系を学歴・個人重視のものに変えたのだった。
核家族が増え、家庭教育は崩壊した。
日本は資源小国なので、またたく間に力の無い国になった。

教育基本法
(教育の目的)
第一条  教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。


僕は昭和30年代に生まれた。
父は両親が年をとってからの子で乳母や姉に育てられ、小さい頃大病をして甘やかされたせいか、家庭を持っても妻子に愛情を示すことが苦手な人だった。
母は共働きの家庭に育ち、兄弟も少なかったためわがままに育った。
僕が小さい頃は、両親にはよく叩かれた。すぐに両親の手が飛んでくるので、長い間自分を主張することができなかった。
僕は両親からの明確な愛を受けること無く育った。
僕が全面的に悪いこともあったが、そのような時には逆におろおろして手を出せないで、自分たちの機嫌が悪い時などにどうでもいいような理由で殴られた。
僕は覚えが悪いので小学校入学前の記憶はほとんど無いが、物心がついてからの体罰は心に傷が残るもののようだ。


ある時、僕は父親と一緒に広島まで日帰りの旅行をした。山陽新幹線の岡山以西が開業前のことだ。
乗り物に弱かった僕は、次の日に熱が出て学校を休んだが、会社から帰ってきてそのことを知った父は「今日はせっかく気分が良かったのに」と言って僕を殴った。僕は叩かれた勢いで飛ばされて浴室の扉に当たりガラスを割ったけど、両親は怪我をして泣く僕を放置してどこかへ行ってしまった。
僕は親と旅行に行くのが怖くなった。

たまにはメッセージ性のあるものもあった。
中学1年のある日、僕は友だちから映画に誘われた。僕はその時、小遣いの持ち合わせが無かったので断ったら、彼は「この映画は明日までだけど、お金は貸してあげるので明日映画に行こう。」と言った。僕は彼に、「3日後に小遣いをもらえるので必ず返す」と約束した。
家に帰ってその話をしたら、父親は問答無用に「お金の貸し借りはするな!」と、僕の左頬を平手で打った。映画の約束は断ったのだが、頬の腫れは3日間消えなかった。
それ以来、僕は人からお金を借りることができなくなった。
自宅購入の際にはさすがにローンを組まざるを得なかったが、それも会社から低金利で借りることとした。自家用車購入は一括払い、クレジットカードや飲み屋のツケ払いもいまだに苦手、人にお金を貸すことがあっても自分が借りることが苦手なので督促ができない。誰かの保証人になることは無い。
僕は、相手に変に気を遣う臆病な人間になってしまった。

僕は小さい時は自動車が好きで、自分でデザインした車を紙細工で作っていた。いつもは乗用車の模型を作っていたのだが、僕にしては珍しくマイクロバスを作り、自分なりに満足の行く作品ができた。
その時の母親は、僕が整理整頓がうまくできないことを怒っていたと記憶しているが、僕を叱ったついでに紙製のマイクロバスを床に投げ踏みつけてぺっちゃんこにしたのだった。僕は、もう人の乗ることの出来なくなったバスを見つめ、悲しくなった。
母はその後、紙のバスを壊したことを謝った。謝るぐらいなら壊さなければいいのに。
それ以降、僕は紙の模型自動車を作ることは無くなった。

中学2年の時、母方の祖母が74才で亡くなった。
まだまだ元気だったのだが、祖母に対する僕の様子を見て、母は祖母の死期を悟ったと後から聞いた。
母は、夫と自分と僕を責めた。母は僕に自分と同じ能力のあることを呪った。
家族の皆が居場所を失っていた。僕の心はもはや荒れていた。


僕は愛に飢えていたとともに、愛情表現に不器用な大人になった。
気が強くて、見栄っ張りで、頑固で、自己中で、心が不安定で、癇癪持ちで、人の話を聞かず、自分の言いたいことを言えず、いつも我慢して、諦めて、自信が無くて、目標を持てず、人の心の痛みが分からない、優しくない、そのような人に僕は育った。

そのまま数十年が過ぎ、これらの性格は米軍や家庭環境のせいにするべきではなく、直視し受け容れるべきものと思った。
人のせいにしたり自分を否定したりしていては、相手を受容することなんてできないし、これだけの短所を備えていれば、同じ苦しみを持つ人の痛みがわかるはずだ。
自分の人格は否定するべきではなく、肯定のうえに自らを改革して行くことに自分の存在価値があると思ったのだった。

第二部への序

モグラはヤマアラシに言われたとおりに家を出ました。
ヤマアラシに針があることは仕方のないことですが、毎日増える引っ掻き傷がモグラには辛かったのです。
モグラには大きな爪があるので、またどこにでも穴を掘って自分ひとりが住むぐらいの家は作ることができます。
春が来て暖かくなれば、元のすみかに戻れることを信じて。

第二部

教育基本法
(生涯学習の理念)
第三条  国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない。


父は昔、僕に向かってこう言った。
「結婚するなら、美人で達者で賢いひとを選べ。」
母のそばで僕にそう話す父は幸せそうだった。

父は会社勤めをしていて母は専業主婦だった。
父は好き放題に生きてきたように見えるが、僕には彼が妻のことを愛し続けていることが分かった。でも、その気持ちは母には全く届いていなかったように思えた。
母は夫からの愛に気づくことなく、人並みの生活を送れることに感謝することもなく、いつも悲劇のヒロインを自演していた。母は、父の収入が彼の小遣いを残して全額家に納められていたにもかかわらず、一言の感謝を述べるでもなく不平不満しか示さなかった。父は大企業に勤めていたので世間相場以上の安定した収入があったのだが、母は収入が少ないと詰ることさえあった。
でも、それが彼女の自我を保つうえでの唯一の方法だったに違いない。
父は頑固な人で、それだけに理解されにくく、常に居場所が無いような様子を示していた。
子どもの目には、両親の気持ちが通じていないように見えていた。


父はある時期、単身赴任をしていた。初めての一人暮らしだった。
業務は多忙だったが、一日頑張ったご褒美の晩酌は格別な味がした。
しばらくすると生活にも順応し、一人の部屋で布団に入るのが心地よく感じるようになってきた。
赴任寮近くの○○銀座と呼ばれる盛り場へ仕事仲間と行くのが数少ない楽しみだった。
なかでも、「スナックK」という店には父のお気に入りの女の子がいた。
水商売の世界では、店の女の子は単身赴任の男にはいれ込んではいけないという暗黙のルールがある。任が解かれると去って行くからだ。
お気に入りの子とはいっても結婚もしていて子どももいるし、年齢は父よりもひとまわり以上若かったので相手にされるわけもなく、なによりも店自体が明るい健全な店だったので、皆で陽気に騒いで歌って、父は翌日からの仕事の活力を得ていた。

その子は父が店へ行くと、必ず父の隣りに座ってくれた。体に触れることも無いけれど、いろんな話をした。
父はそこで、おもてなしの心を学んだ。
人に優しくすることを学んだ。
そして、妻一人に優しくできない自分が、店の女の子に優しくできるわけがないと思った。
その子はとても聡明で頭の回転が極めて早い子だったが、父はかつて、生涯でただ一人、自分に「好き」と言ってくれた妻の賢さに惚れたことを思い出したのだった。

僕が成人となって父と酒を飲む機会が何度かあったが、父はアイデアマンだった。僕は父の突飛なアイデアを、笑い飛ばしたり感心したり、実現に向けた荒唐無稽な議論で盛り上がったり。今でこそ会社は従業員に成果しか求めていないが、一昔前の企業戦士はいかに業務を改善するかに重きを置かれていた。
父は家族に対して頑固なイメージしか示さなかったが、息子と酒を交わす時の父は雄弁で知識も豊富で考え方も柔軟だった。


「激動」と言われる時代が長く続いている現代において、価値観もめまぐるしく変化している。
変わるものに適応していくためには、自らの行動や思考も柔軟に変えて行く必要がある。
人間は常に学習し、常に発達し続けているものだ。
人格も、その気になりさえすればいくらでも高くすることができる。
発達が人間の一生を通した継続的な変化の過程であるならば、人間は一生を通じて変化し続けなければならないし、人格の完成を目指し続けなければらないのではないかと考える。
そうしなければ、真実は何も見えない。


僕は、両親が喧嘩するのを一度だけ見たことがあった。
原因が何かは分からなかったが、僕が居合わせた時には父が水道の蛇口をひねり、洗面器一杯に張った水を母に浴びせるところだった。
さすがに僕は間に入って仲裁した。
父は母に手をあげることができない人だと思った。
その時、母の心は水よりも冷えていた。

母が僕の家に来た時にプッチーニの歌劇「蝶々夫人」のレーザーディスクを見せたことがあった。
両親が結婚前に舞台の袖で合唱した曲、「あんなに仲が良かったのに」とつぶやき、彼女は涙を拭っていた。

第三部への序

モグラにとって、勝手のわからない土地での生活は辛いものでした。
でも、支えてくれる友だちもできたので、冬の間なんとか頑張ることができました。
そして春が来て、モグラは前の家に帰ってきました。
ところが、そこにはヤマアラシが家族をともなって住んでいました。
モグラの帰る所はありませんでした。

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DILI

Author:DILI
関西在住。平日は北陸方面で単身赴任中。
息子は、父の影響で大の鉄道好き。
用事が無くても電車に乗る。

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